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バジリスク 小説 『短文集』1

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短文集に掲載している「バジリスク」の話が10個以上になりましたので、10個分纏めてこちらに掲載します。
尚、此処に記載する話は『短文集』にあるものを一部修正したものです。



参照
『短文集』12―15.17




内容の系統
『待ち人、帰る妖』(クロスオーバー) 2
『血脈交合』 4











『短文集』12

『妖の真』
地より生じ出た人を模った影が、変わり果てた姿を見下ろす。
皮と肉を剥ぎ取られ、骨まで砕かれて、捨てられた己を。
自他共に認める美丈夫だった生前の名残は微塵もなく、醜く無残な姿にこの上なく絶望した。
―ああ、なんてこった。 こんな姿じゃ、帰れねぇ。
もうすぐ子供が生まれると言うのに、こんな姿で帰っても誰も俺だとわからないだろう。
何よりも愛しい蛍火と娘に、このような姿など絶対に見せられない。
――体を。
失った体を、元通りにせねば。
自分の皮と肉は焼き払われ、跡形もない。ならば”他から調達”すればいいことだ。
生前と同じ容貌を取り戻して、愛しい女の元へ帰る。
それが新たに生まれた妖の真だった。
『待ち人、帰る妖』 夜叉丸 (モノノケの誕生)


『短文集』13

『提案』
「……里の方針に逆らうつもりか?」
「ああ」
夜叉丸の問いに何ら躊躇いなく、至極当然と言った様子で左衛門が答えた。
「こんな馬鹿げた掟なぞ、幾ら命令でも…従えぬ。
儂は弦之介様を尊敬しておったが、今回ばかりは失望した」
鋭く冷ややかな目で語り終えた後、薄く目を開いたまま身を乗り出す。
「お主らも儂らを殺して逃げたところで安住の地など何処にもないぞ。
それよりは恋しい者同士ここで暮らした方が遥かにマシというものじゃ」
抜け忍になった者の行く末は忍者ならば誰もが知っている。そんな目に遭いたいかと目で諭した。
「それに身重の女子を連れて、里の追撃を逃れられるとは思っておらんだろう?」
最大の懸念を口にされて、二人が押し黙る。
引き裂かれるのならば、せめて相手を殺して二人で手を取り合って逃げようと決めた上で甲賀へ来た。
だが、そこで齎された提案は死すらも覚悟した二人の心を揺さぶった。
やや間を置いて、蛍火が警戒しながらも尋ねる。
「…………何ゆえ、私達を選んだのですか?」
「お主らならば断る理由がないからじゃ」
思わず激昂して立ち上がろうとした夜叉丸を、蛍火が制す。
確かに、この甲賀者の言うことにも一理あった。
『血脈交合』 左衛門+夜叉丸+蛍火 (伊賀の恋人、甲賀の兄妹と対面)

『共犯者』
「わしらにとっては、新しく弟妹が増えたようなものじゃ」
豹間の詰問に怖じることなく、飄々と答えた。
最初の頃の共同生活は思い出すだけでも頭と胃が痛くなるものであったが、秘密を共有する者同士の連帯感は皮肉にも宿敵同士である甲賀、伊賀という垣根を越えて強い結束を生み出した。
今では和気藹々とまではいかないが、左衛門を長男とした四人兄弟という体を成して、比較的円滑な共同生活を過ごしている。
「あの二人は感情が表に出る、素直な性質じゃからの。 分かりやすくて助かっておる」
伊賀の恋人…夫婦は年若く妹よりも幼い。そのためか最近ではお胡夷にも”姉”としての意識が芽生えているように左衛門には見受けられた。
「……里の方針に逆らっていると、わかっておろう」
重く放たれた言葉に、左衛門の目が鋭さを伴って薄く開かれた。
『血脈交合』 左衛門+豹馬 (こんなやりとり)

『不可解な男』
並んで立ち去る二人の後姿を見送る形になった丈助が、その場に立ち尽くす。
唖然としていたというのもあるが、何よりも解せなかった。
―左衛門殿は何を考えておるんじゃ?
冷静沈着で滅多なことでは感情を表に出さぬ。まさに忍びの鑑のような男だが、今はその性質が厄介だった。
疑問を問いただそうにも幾度も飄々と受け流されて何一つ聞けずにいたが、とうとう実力行使に出たのだ。
直情型らしき伊賀者を挑発して口を割らせようとしたが、いきなり黒縄を用いられて多少焦った。
刀剣ならば肉で白刃取り出来よう。しかし摩擦力すらも殺傷力に過剰される黒縄は、彼と相性が悪く危険なのだ。
左衛門やお胡夷以外の甲賀者に未だ心を許さぬ、伊賀者の鋭く殺気に満ちた眼差しは、今思い出しただけでも冷や汗が流れ出てくる。
―本当に、どうしたんじゃろうな?
この世の何よりも妹を溺愛していた左衛門が、その夫を許すことや余所の女に手を出すことも、丈助には到底信じられなかった。
『血脈交合』 丈助 (疑問は白布に落ちた墨のように)

『疑念』
おかしい、ありえない。
念鬼の頭に巡るのは、それしかなかった。
自分の知る夜叉丸と蛍火ならば、恋しい者の伴侶となった者を生かしておくわけがない。
そもそも二人が甲賀者を殺して逃げる時には、出来る以上の手助けをしようと待っていたが、何年もその気配すらなかった。
ありえぬ自体に謎を解き明かそうと、こうしてこっそりと彼らの住居に忍び込んだ。
己の気配を完全に消し去って、明かりを取り入れる程度の小さな格子窓から部屋の中を覗き込む。
そうして部屋の光景に我が目を疑った。
それは本来あるべき光景だが、今は会ってはならぬ光景だ。
外に漏れ聞こえぬように声は押し殺されているが、その分激しい息遣いと肉体同士がぶつかる音。顔を覆いたくなるような卑猥な音が室内を満たしていた。
互いに離さぬとばかりに絡み合い、深く繋がる二人の男女。
――夜叉丸と蛍火が、睦み合っていた。
思わず声を上げた瞬間、両者の鋭い眼光に射抜かれた。
『血脈交合』 念鬼 (新たに秘密を知った人物)

『化粧』
白粉を塗り、紅をさす。
鏡に映し出された姿に、可憐な少女の頬がほのかな薔薇色に染まった。
白無垢を纏った花嫁は、これから恋焦がれた許婚の元に嫁ぐ。
蛍火 (夜叉蛍で結婚直前)

『終わりなき怨念』
骸のない父の墓前で、母は可憐な顔を鬼のように歪めて最愛の人を奪った甲賀への憎悪を延々と説いた。
それは無知という純白を、怨念に満ちた黒に染め上げるように。
毎日繰り返し刷り込まれて、いつしか幼い娘の心にも「甲賀者」への怨恨と殺意が根深く刻まれてゆく。
蛍火+α (もし争忍が途中で終わっていたら。断ち切れぬ負の連鎖)


『短文集』14

『Q&A』
Q.陽炎様へのセクハラ発言に、往来での派手な立ち回り、そしてすぐ死んでしまうところなど……。どれをとっても兄様らしくありません。
一体後半の兄様はどうしてしまったんでしょうか? Byお胡夷
A.薬師寺天膳の顔型を通して、天膳ウイルスに感染してしまい、天膳病を患ったからです。
(左衛門の天膳変化後に纏わるちょっとしたネタ)


『短文集』15

『再決』
眼前に対峙するのは、見目麗しき青年。
しかし、その身に宿す禍々しさは、到底人間が持ち得ない程淀んでいる。
「以前会った時は、見るに耐えない姿でしたが……。
それが、貴方の本来の姿、ですか」
数多の人間の肉と皮を剥ぎ、己の肉体として奪ってきた妖〈モノノケ〉
二百年越しの対決に、薬師の目が鋭く眇められた。
『待ち人、帰る妖』 薬師 (Bパートで、薬師との対峙シーン)


『短文集』17

『Q&A 再び』
Q.小四郎殿が今まで女子と縁がなかったのは、本人の気質以外にも何か理由がございますか? By朱絹
A.薬師寺天膳に悉く邪魔されたり、奪われていたからです。
(小四郎の童貞に纏わるちょっとしたネタ)
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