未完

聖剣伝説3 未完 『夢夜』 5

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注意
六人分の話を書きますが、全体の繋がりはなく、それぞれ単独の話としてお読み下さい。
共通しているのは「夢」の話というだけです。

















ケヴィン編~『陽光』~















こんな夢を見た。

空に顔を出し始めた朝日の光に誘われるようにして重い瞼を開く。
睡魔が頭を擡げて眠りの海へと引きずり込もうとするが、目を擦って深呼吸を繰り返した。
眠気が遠のいていくのを実感してから起き上がり、これから明るみを増してゆく空を見上げる。
”外”に出た当初は太陽の光が眩しすぎて、満足に目を開けることが出来なかった。常に俯くか、目を眇めるか。時には瞼を閉ざして嗅覚のみを頼りにしていた頃もあった。
でも、今は太陽の下でも頭を上げて、真っ直ぐ目を開けていられる。
それが嬉しくて、昔の自分と比べると感慨深かった。
この思いが”当たり前”にならないように、朝起きた時に空を見上げて、暗闇に閉ざされた頃を思い起こすのがケヴィンの習慣の一つだった。

「おはよう、デュラン」
「おう、ケヴィン。 いつもながら早いな」
不寝番を努めていたデュランが大きく欠伸をして手入れをしていた剣を鞘に戻した。
日の出と共にケヴィンが目覚めた後に見張りを交代して、不寝番は束の間の休息をする。
それがいつの頃からか仲間内で定まっていた。
何が起きるか分からない旅路だから、休める内に休んでいた方がいいと、眠そうな彼らを見かねてケヴィンが提案したことが始まりだった。
どの道朝日の眩しさで目覚めるケヴィンにとっても、不寝番を終えた仲間にとっても、有効な時間活用法だった。

最近の悩みは空が明るみを帯び始めても、頭は覚醒しきらずに重い瞼をこじ開け、しつこく眠りを欲する体を無理矢理鼓舞して起きることだ。
―どうしてしまったんだろう?
自分の体の変化の理由が分からずに、不安を胸に抱いていた。
昔親しくしていた人も病死する前、終始眠気を訴えていたから余計恐ろしくもある。
病気か否か調べようにも旅の最中であるし、何よりも人間の医者が獣人を診てくれる保証などないから、誰にも言えなかった。

「ケヴィン。お前最近何か思い悩んでいるようだが、どうかしたか?」
デュランの言葉に話そうかどうしようか迷ったけれど、喋るまで絶対に引き下がらないことは分かっていたので、少し躊躇いながらもおずおずと最近気に病んでいる事を話した。
何かの病の前兆ではないかと言い終えてから、デュランの言葉を待つ。
デュランはケヴィンに幾つかの質問をすると、顎に手を当てて一言。
「そりゃあ、病気なんかじゃなくて、お前の体が太陽に慣れたからだろ?
朝早く起きられない事を除けば、何の不調もねぇんだろ。 だったら時差ボケ?みたいなのが治ったんじゃねえの?」
月明かりが唯一の光源である暗闇の世界では光に慣れないこともあっただろうが、日の光とは異なる体内時計もあって、体がいつ眠ればいいのかわからなかったのかもしれない。
それが最近になって体が太陽に慣れて、体内時計も”外”のリズムになった。
だから、日が昇りきる前に起きるのが辛い。そういうことではないだろうか。
「オイラの体が……太陽に?」
考えてもいない答えだった。
だって、生まれてから旅に出るまでずっと太陽の光を知らなかったから、正直慣れるとは思ってなかったのだ。
けれど、初めて森から出た時に目を突き刺し、眼球を焼き尽くすと錯覚した眩しすぎる陽光でも、今は苦痛や負担を受けることはない。
暗闇の方が目は冴えていたのに、今は眠気に苛まれる。
それが、慣れたということなのか。
「お、おい!?」
デュランの慌てた様子に何事かと思うが、視界がぼやけて自分が泣いていることに気づいた。
止め処もなく涙が溢れ出して、それでも寝ている皆を起こさぬように声を押し殺して嗚咽を漏らす。
「ほら、これで顔を拭け」
差し出されたハンカチで涙を拭う。
人の温もりに触れていると、予期しなかった感情の揺らぎも、大分収まってきた。
「……デュランって、見かけによらず紳士だね」
粗暴なところが目立つが、要所で真摯な面を見せる。スルメな男前だ。
何故かデュランは憮然とした様子で顔を背ける。
あまりにも分かりやすい”照れ”に、ケヴィンがついつい笑い声を上げた。
月夜の下でなく、太陽が似合う明るい表情で。

重い瞼をゆっくり開けると、視界に飛び込んできたのは自室の天井だった。
そのことに何故か落胆すると共に、夢の続きを見たいと切に願う。
よい夢だったという印象しか残っていないが、それでもとても暖かくて、いつまでも見ていくなる夢だった。
―もしかして、母さんの……夢?
ベッド脇に置かれた母の肖像画に視線を転じる。
”母”の姿を伝える貴重な絵で、まだ幼い少年の母に繋がる唯一の縁だった。

無機質で生活感の欠片もない部屋の中で、肖像画は一際異彩を放っていた。
姉代わりの女性が話してくれた事を信じるならば、これは”あの父”が描いたものだという。
彼女の言葉を疑うわけでないが、ケヴィンにとってそれは到底信じがたかった。

母の金髪と自分の金髪。
それは話に聞く、太陽のようで―。
―……会いたい。 母さんに……会いたい……。
先程の夢の内容を、無性に思い出したかった。


言い訳
今回は予知夢の話です。
最も夢の内容は忘れていますけど。

後、獣人王の意外な特技を捏造しました。


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