未完

火星物語 未完 『恐れを知らぬ者』

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注意
オリジナル設定のある話です。
他の話とは独立した話です。
続くかどうかは未定。
















アロマ以前に存在したという風使いだけの国。
後にも先にも迫害に晒されてきた風使いの歴史において絶頂期だったその時代の、とある文献の中には風の流れを操れば時空を越えることも可能だと書かれている。
最もその理論を実現するためには全ての風を集めなければならず、最後の風である紫の風が”伝説”とされていた当時では、その理論は荒唐無稽な幻想として処理されていた。
しかし、全ての風使いを仲間にしたフォボスは違う。
その理論を実証できる唯一の風使いだ。
問題はラピュタで得た情報の中に、未来から過去へはいけてもその逆は不可能だという、それがフォボスに不安を与えていた。
でも、その情報が本当に正しいのなら過去へ行くだけの片道切符で、現代に帰ることはできないと無理矢理にでも強く自分に言い聞かせた。
例え無理でも、やれるだけはやる。ただ何もせずに最初から無理だと諦めることなど、フォボスには出来なかった。

風のクリスタルを前にして気合を入れると、文献に書かれていた通りに慎重に床に陣を描き、不足分のエネルギーを風のクリスタルから補給するように編みこんだ。
風使いの先達は既におらず、教えてくれる人間もいない。
それでも風の館に残されていた文献と、風という優秀な教師達、そして貪欲な猛勉強があれば独学でも何とかなるものだ。
―ごめんね、アンサー。君の命と魔力で創られた風のクリスタルを補助動力にしてしまって。 必ず成功させるためにはどうしても君の力が必要なんだ。
煌くクリスタルを見上げて、今は安らかに眠る友人に深く詫びる。

「風よ、全ての風よ。 異なる時を繋ぎ、望み人をここに!」

全ての風の力と、フォボスの力を以ってしても到底足りず、風のクリスタルからも膨大な魔力が奪われていく。
洞窟を覆っていた結界に使用されていた力すらも吸い取られ、消滅したのを肌で感じる。
自分の力が足りないせいで起きてしまった事態に動揺し、焦燥する。
これ以上風のクリスタルから力が奪われて、壊れてしまってはそれこそアンサーに合わせる顔もなくなるし、また二度とアロマに帰れなくなる。

身体の奥から力が根こそぎ奪われ、生命力すらもエネルギーに変換されて流れ出していく。
鍛えられた健康的な肉体が急速に萎びて、生気が失われ、痩せこけ死人のように青褪めていった。
藍玉の瞳も輝きを失い、肌からは完全に血の気が失われている。
後一歩踏み出せば生者の枠組みから外れる危うい均衡の中、どちらかが主導権を握るか。まさしく命懸けの綱引きだ。
フォボスが勝てば望みの人物は過去から呼び寄せられる。しかし負ければ全ての力を奪われ塵も残さずに消滅するだろう。
自分の失敗のせいでアンサーの形見をなくし、セイラ達を哀しませるわけにはいかない。
負けてなるものかと、よろける足を踏ん張り、力の入らない腕を渾身の力で掲げた。

陣が発動して、嘗てよく見た時空の狭間の光景が眼前の歪みから現れる。
後一秒遅ければ、確実にフォボスの命が危うかった。

先程まで死を目前としながらも、悠然と誇らしげに笑った。
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