未完

火星物語 未完 『発端』

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注意
オリジナル設定があります。











400年前、アロマ王国の終焉を民衆の心に深く焼き付けたのは、爆破によって崩れ行くアロマ城だったという。

400年間、硬く閉ざされていたアロマ城跡は荒れ果てたお化けの巣窟と化していた。
襲い掛かってくる陽気なお化けを倒しながら、道なき道を突き進んで、漸く最奥らしき部屋に辿り着いた時、フォボス達は既に疲労困憊だった。

―はぁ、疲れた。
考えても見ればカンガリアンの下水道から少年B…アービンを連れ出してから、今に至るまで一度も休んでいない。
幾ら体力お化けだと揶揄されるフォボスも疲れてくるし、ましてやセイラは立っているのもやっとの状態だ。
―早くクエスからの手紙を見つけて帰ろう。
そこまで考えて、破壊された家を思い出せば、更に気分が落ち込む。
ハーネスの軍隊は、何故フォボスの家だけを破壊したのか。
その理由に、全く心当たりがないのだ。
強いてあげるとすれば、フォボスの父親が考古学の分野では禁忌とされるアロマ王国の歴史を調べていた、という程度か。

フォボスがそれとなく周囲を見回して、横倒しになっている柱を撫でる。
部屋の大きさといい、辺りに散らばる瓦礫や残骸から、この場所が元は玉座の間だったと推察できた。
けれど嘗ての玉座の間も、今では明らかに”何か”が出そうな不穏な空気に満ちており、これ以上足を踏み入れることは躊躇われる。

「フォボスさん!早くクエス様の手紙を探しましょう!!」
「……そうだね」
セイラの勢いに押される形で、フォボスが朽ちた玉座に近づいていく。
その時だった。
「誰じゃ……!?」
地獄の奥底から響き渡るような底冷えのする声が聞こえてきたのは。

何故今までその姿が見えなかったのか。
禍々しい骸骨の亡霊が床に剣を突き刺し、片膝を立ててフォボス達を凝視している。
「わしの城に入ってきたのは誰じゃ……!?」
すかさず身の丈ほどあるスパナを抜き放ち構えるフォボスの後ろに、セイラが駆け寄り杖を構えた。

―強い。
殺気に、肌が震える。
これまで戦ってきたお化けとは明らかに一線を画す亡霊に、フォボスの体が緊張で強張った。
ちらりとセイラの顔色を見て、これ以上戦うのは厳しいと判断する。
―どうしよう。
無理だろうけれど、戦いを回避する方向へと考えを巡らせると、ある言葉が典型のようにフォボスの頭に降り注いだ。
それに思わず大丈夫か?と自分自身に突っ込んだとき、亡霊が床から剣を抜く音が聞こえた。
この際駄目もとだと自暴自棄に覚悟を決める。
「………僕は……」
これから言う嘘に、声が詰まる。
しかし、亡霊の剣の切っ先がフォボス達に向けられて、意を決した。
「僕は、アロマの王子だっ!!」
フォボスの声に弾かれたように亡霊の動きが止まる。
「…………アロマの、王子……」
亡霊が纏っていた凄絶な殺気と敵意が徐々に失われていった。

予想外の反応にフォボスが唖然と亡霊を見上げる。
これまで見てきたお化けとは異なるこの亡霊が、もしアロマの臣下か関係者ならば、多分戦わなくてもすむかな?という程度で、正直効果は期待できないと考えていた。
ゆっくり剣を下ろしていく姿に、フォボスがホッと胸を撫で下ろす。
直後、後頭部に強い衝撃が走り、危うく床に突っ伏しかけた。
痛みに呻くフォボスの背後から、
「フォボスさん」
体の最奥から凍る絶対零度の声に、振り返ったフォボスの視線が上がってゆき、憤怒に彩られたセイラの顔と鉢合わせた。
―しまった!
クエスの大ファンであるセイラの前で、あんな嘘をつけば彼女の怒りを買うのは必然だ。
とんでもない失態に気づいたが、後の祭りだった。

「なんていう事実無根のデタラメなことを言うんですか!?」
凄まじい形相で恫喝されて、蛇に睨まれた蛙のように恐ろしさで身が竦んでしまう。
だから、またしても気づくのが遅れた。
「………出鱈目……だと?」
あっ、と思った時には既に遅く。
亡霊から漂う不穏な空気に、フォボスとセイラが恐る恐る亡霊を見上げる。
フォボスのアロマ王子発言に、敵意をなくしていた筈の亡霊は、その身一つで修羅を体現していた。
「王を騙るその罪……万死に値する」
眼窩の窪みの奥が妖しく光る。
「許さぬ!!」
足を大きく踏み出し、振り上げていた剣を勢いよく叩き下ろした。
大地を揺るがす轟音と共に、破片が飛び散り、粉塵が舞い上がっていく。
手応えのない剣に、亡霊が王を騙る大罪人の姿を求めて、剣を大きく薙ぎ払うと、舞い上がっていた400年分の埃が風に流されて空に消えていった。

鮮明になった視界の中、真っ先に飛び込んできた亡霊の姿に、フォボスが額に脂汗を滲ませる。
剣を振り下ろされた時、咄嗟にセイラを突き飛ばしたが、後数秒遅ければ砕かれた床と同じ運命を辿っていただろう。

「………………余計に怒らせましたね」
怒り狂った亡霊よりも、すぐ側にいるセイラが……怖い。
「…………ごめんなさい」

跡形もなく霧散した亡霊の最後を見届けて、ホッと息をついたのも束の間。
精根尽き果てたセイラの体が崩れ落ちて、力なく床に座り込んだ。
「セイラ!? 大丈夫?」
「……はい。 少し……疲れただけですから」
疲労を押し出すように深々と気を吐いた後、フォボスの顔を見上げる。
「ところで……フォボスさん。 さっきのあれは………本当に嘘、ですよね?」
何処か躊躇うように尋ねるセイラに、フォボスが首を傾げる。
「さぁ? 僕は関係ないと思うけど……。 実際どうなんだろうね?」
「ええ!?」
「風使いの素質は血筋によって決まる……ってのは聞いたけれど」
先日、過去に行った時に、風使いの素質は血に依って受け継がれるものだという事を聞かされた。
だから、フォボスが風使いである以上。クエスとの…アロマ王家との繋がりが皆無とは言い切れない。

「でも、400年も前のことだから、正確なことなんてわからないよ」
400年間、戦争こそなかったが大きく社会が変容した事で長らく大混乱に満ちていた時代もあった。
400年前から300年前までの間は失われた百年とされて、多くの記録が紛失したのだ。だから、家系図が残っている家など非常に稀だろう。
第一フォボスの両親は天涯孤独の身の上だったので、例え先祖の事を調べようにも、出来る環境ではなかった。
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