未完

聖剣伝説2 未完 『生贄』

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注意
オリジナル要素が強いです。
2→FF外伝という時系列前提です。

ルサ・ルカが黒いです。人によってはどす黒く感じるかもしれません。











ジェマが麗しい女性と並んで祭壇の前に立ち、ピラミッド型の壇上に納められている水の種子を見上げる。
生命力に満ち溢れた種子を見ているだけでも敬虔な気持ちになったものだ。しかし、世界からマナが尽きかけている今、種子から立ち上っていた濃密な気配は消失し、全ての力を失ったようにくすんでいた。
「……ルカ様……」
共に種子を見上げている、物思いに沈む女性の横顔を見つめた。
マナの減少はジェマの身近にも様々な影響を与えている。そのよい例がルサ・ルカの”成長”だ。
嘗ての神官は蕾のまま200年も時を止められた少女だった。しかしマナの減少により堰き止められていた時が緩やかに流れて、大人になっていく。
「私には、どうしてもわからぬことがあります」
「何じゃ?」
改めて言葉にしてから躊躇い、口ごもるジェマに、神官が話すように続きを促した。
「マナを生み出すマナの木がなくなり、マナを再生させる神獣もいなくなったことで、妖精や精霊はこの世界から消えて、魔法も失われました。
……今、現在この世界に浜名を供給する存在がありません。 マナが失われたも同然なのに、何故世界は存在していられるのですか?」
マナが著しく減少する事で森羅万象は弱り、力を失い、人心も乱れ、争乱が起きやすくなる。そしてマナが尽きれば生物は死に絶え、世界は存在を維持できなくなる。
歴史を遡れば遠い昔、マナの要塞が封印された後人口の約八割以上が死に絶えたのは、世界に満ち溢れた毒のほかにも急激なマナの減少も大いに関係していたという。
これらの情報は、マナの研究をしている知識人にとっては常識だ。
なのにマナの供給源をなくしてから数年も経過したのに、何故世界は存在していられるのか?神獣の破片として降り注いだ高濃度のマナはいつまで持つのか?これらは人間の、マナの研究者にとって大いなる謎になっていた。
重々しく尋ねたジェマに神官は目を瞬かせた後、溜息を吐いた。
「……ジェマよ。おぬしは数十年もマナの調査と研究をしていたのに、”何故か”を知らぬのはどういうわけじゃ?」
「申し訳ございません」
「……まぁ、よい。 只人のマナに纏わる知識と技術は、あまりにも未熟じゃ。それを思えば、おぬしが知らぬのは当然の事かもしれん」

「よいか、一言にマナの減少と言っても、決して皆無にはならぬから世界は滅びぬ」
「しかし、いずれは残されたマナもなくなりましょう。 なのに何故、”ありえない”と断言なさるのですか?」
神官が天井を仰ぎ見て、指を差す。それに釣られてジェマも顔を上に向けた。
「極微量じゃが、宇宙からも絶えずマナは降り注いでおる。そのマナによって世界からマナが消失することはない」
宇宙から齎されるマナは、マナの木や神獣によるマナの供給量から見ればあまりにも微々たるものだから殆ど注目されることはない。また、その特性上、亜人種達はある程度知っているが、只人には全くと言っていい程伝わっていない知識でもあった。
そして、そのマナは世界を維持するには十分な量であっても、生命体が存在するにはあまりにも量と質が欠けている。
世界に生命が存在できるだけのマナを供給できるのは、マナの木と神獣による再生しかない。
手を下ろすと、真剣な面差しでジェマの顔を見て、彼の言葉を待つ。
「ですが、マナの要塞によって世界が滅びるとルカ様は仰られたではありませんか」
「マナの要塞は神の怒りを買うほどマナを異常消費する超兵器じゃぞ。 あんなものが起動し続けておれば、それだけであらゆる供給源から齎されるマナを全て食い尽くし、本当に世界が消失する事態に陥っていたじゃろう」

「先程の質問じゃが、現在のマナの濃度は妖精たちが存在するにはあまりにも希薄じゃが、それ以外の生命体が存在していく分には十分なマナの濃度だから、当面は存在しておられるのじゃ」
ヴァンドールとの戦時中のマナの濃度の値を300とすると、健全なマナの値は千を越えており、神獣が暴れ狂う値は110以下。妖精達が存在できる値が100。そして現在のマナの濃度は90以下から少しずつ薄まっている状況だ。そして生命体が存在できる最低濃度が30。それを下回ればこの世界は虚無に包まれ、やがて……。
いずれ起こり得る最悪の未来を頭から払い除けた。
それを防ぐ方法は、ただ一つ。新たなるマナの樹を作り、世界にマナを供給し続けることだけだ。

「宇宙からマナは供給され続けておる。しかし世界から生命が存在するだけのマナはいずれなくなる。
”世界の滅亡”を防ぐには、新しいマナの木が、苗木とその予備が必要じゃ」
新しい苗木。
敬愛し、称賛する神官が顔色一つ変えずにそのような残酷な言葉を言い放ったことが信じられずに、神官の目を見つめる。
しかし彼女の目に宿っているのは強い意思の篭った光だけで、ジェマが望むような罪悪感も、悲しみもなかった。
そのことに、ジェマの胸中に言い知れぬ失望と落胆が沸き起こった。
「ルカ様、ランディの娘を生贄になさると、よくもそのようなことを。
ランディほど世界に後見したものはいないのに、その彼から家族を奪うような真似、私は賛同できません!!」
必死に訴えるジェマに、ルカは毅然と彼の目を見据えた。
「生贄とは、言葉が過ぎるぞ。ジェマ。
そうやってお主は感情的になって碌に考えようともせずに、闇雲に反対するが、犠牲を惜しんでこのまま何もせずにいたら、いずれは皆死に絶えるのじゃぞ」
神官はジェマの胸に指を突きつけ、前に出る。必然的に後ろに下がらざるを得ないジェマを、更に後ずさらせる。
「お主は情を優先させた愚かな決定で、この世界からあらゆる生命を一掃してもよいのか!?」
厳しく糾弾され、ジェマがたじろいだ後、口を開け…深く息を吸い込んで言い返そうとしたが、思い直し、再び言いかけたが、結局何も言わずに口を閉ざした。
確かにルサ・ルカの言うとおりである。しかし、双子の娘達を犠牲にしろ、というのはあまりにもランディの思いを踏み躙り蔑ろにしているのではないのか?
なき親友の忘れ形見が漸く手に入れた幸せを守るのが自らの務めであると誓っているジェマには、神官の話は到底納得できない。しかし……。
神官から目を逸らして葛藤するジェマの片に、ルカがそっと優しく手を置いた。
「ジェマ。お主が情愛深いのもわかっておる。 セリンの代わりにランディの後見を自任しているお主のことじゃ。あの娘達は大切な孫も同じ。それを容易く犠牲にせよといわれて、激昂するのも当然じゃ。
しかし、ジェマよ。これだけはどうかわかって欲しい。 このままではセリンやランディ、そしてお主が愛し、守ってきたもの全てが失われることになるのじゃ。ありとあらゆる命…パンドーラやタスマニカの人々も、お主の家族や部下達も、そしてお主やランディ達も死んでゆくことになるじゃろう。
助けられたかもしれない命が、目の前で死んでいくのは見たくなかろう? それを見ながら、絶えず訃報を聞きながら、己の選択を後悔し続ける……。
ジェマ。おぬしの良心はそれに耐えられるのか? 何十億という人間の死に責任を持ち、その罪悪感に直面する勇気はあるのか?」
「………………」
胸の中で疼く怒りを握りつぶして、神官を見る。
「二人か、世界か。どちらを優先させるかなど、考えるまでもなかろう。
軍人であるお主ならば、それはよくわかっている筈じゃ」
「…ええ、とても。 そして私がどちらを選ぶかは胸の内に秘めている限り、誰にも関係のない事です」
「……随分と反抗的じゃのう。わしは娘達とも親しいお主にも理解して、納得してもらいたいだけじゃ」
神官の愚痴を聞きながらも、おそらくと考える。
大義を優先するルカと、情を優先するジェマとでは、あまりにも考え方が違いすぎる。それゆえにこの問題について幾ら話し合ったとしても、論点は交わることなく平行線のまま終わるだろう。

「後見代わりの私にも話されたということは、当然ランディにも話されたのでしょう?」
「勿論。 娘の人生か、世界の命運か。どちらかを選べと問われれば、答えは決まっておろう。
そして、ランディはお主と違って、その事をよくわきまえておる」
追い立て、逃げられれぬように囲み、動きを封じた上で止めを刺す。
そのように神官に言い含められたランディの嘆きが、ジェマの胸を突く。

ジェマの脳裏に結婚の祝福を受けるランディの笑顔が、まだあどけない双子の娘達の顔が。そして今も尚焼きついているセリンの誇らしげな顔が鮮明に蘇った。
すまない、すまない。
胸の中で慟哭を上げ、謝罪を繰り返し唱えながらも、表面上は一切の動揺を見せることなく、深々と神官に頭を上げて。
この場を、足早に立ち去った。

言い訳
ルサ・ルカは大切な一人をとるか、大勢をとるか、どちらかしか選べないとなったら躊躇いなく後者をとるタイプだと思う。
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