未完

聖剣伝説HOM 未完 『それは真か、偽りか?』1

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注意
シリアスなタイトルですが、中身はギャグ系です。
誰が誰に投票(好意を伝える)をするか、という話です。

オリジナル要素があります。



『それは真か、偽りか?』~Case ロジェ~
注意事項

一人三枚の投票用紙に、三人まで投票可。
三人に投票するも、一人や二人に投票するもよい。
但し、自分への投票は無効。

投票時に”大声”で読み上げますので、熟慮の末に書かないと思わぬトラブルや、人間関係がこじれる可能性があります。
万が一の事態が生じても、当方は一切の責任を背負いません。
















「ナイトソウルズの面々は私に投票をお願いしますよ」
笑いザメに相応しく爽やかな笑顔でサラリと鬼畜な事を言い放ったユリエル。
その”要望”が、これから始まる阿鼻叫喚の幕開けだった。

ケース ロジェ 1
ユリエルの問題発言の後、どよめきと怒号で場は荒れた。しかし事が大きくなる前に彼は、
「”ナイトソウルズの面々”というのは私の部下達だけなので、あなた方は含まれませんよ」
と、”同盟者”であり、”協力者”の人々に答える事で多くの抗議を受け流した。

―誰に投票するか。
無理に貰ってきた四枚の投票用紙に書かれた名前を、苦悶に染まった暗い目で一心に見つめていた。
ロジェの本心としてはエレナとユハニと兄の三人に投票したいのだが、隊長に投票するために誰かを削るしかない。それがどうしても出来ずに、もうかれこれ何十分も悩み続けている。
隊長は票の強制はしない。これはあくまでも”提案”なのだといっていたが、そもそも隊長に逆らうという選択肢がないロジェ達にとっては今回の提案は脅迫と言っても過言ではなかった。

―誰を削るべきか。
エレナか、ユハニか、兄か。この三人の中から誰か一人を切り捨てねばならないという胸が引き裂かれる事実に、ロジェの心に血涙が迸った。
誰を選んでも待ち受けるのは良心の呵責という地獄。それを考えればユリエルを省くべきだが、ロジェにはそのような無謀や蛮勇は持ち合わせていない。
彼に出来ることはこの中から一人を泣く泣く省くことと、ユリエルへ決して本命に投票されるなという呪詛を送ることくらいだ。

「ロジェ」
何処か吹っ切れたような親友の声に振り返った。
キュカが肩越しに四枚の投票用紙を見て気の毒そうな顔をする。それが無性に苛立ってきた。
「キュカは誰に投票するのか、もう決めたのか?」
「ああ、俺か。隊長に二票とミネルバに一票だ」
「へぇ、何で隊長に二票を?」
確か隊長の問題発言が飛び出す前のリサーチでは、キュカは昔馴染みの誼としてミネルバ、ジョスター、アルマの三人に投票するつもりだったはずだ。
「どうせ票を投じるんだったら、多いほうがいいだろ」
―ああ、なるほど。 ようはご機嫌取りか。
それなら隊長に三票を投じればいいのに、と思うが、それは言わないでおこう。
「これも処世術の一つだ。それよりも……」
キュカがロジェの隣の椅子に座り、投票用紙を覗き込む。
まだ誰にするかも決めていないが、こうやってじろじろ見られるのはあまりいい気がしない。これだからアルマにデリカシーの欠片もないと罵られるんだ。
「これ、お前の兄貴だな」
キュカが一枚の投票用紙に指を当てる。
兄という一言のみが書かれた投票用紙に。
「そうだよ」
「だったら何で名前を書かないんだ。 まさかお前らの仲ってそこまで険悪なのか?」
一瞬何を言われているのかロジェには分からなかったが、すぐに思い当たった。何せ兄に名前がないのが当然だと頭の中にこびりついているからだ。
「ああ、兄さんには名前がないんだ」
幻夢の主教には名前がない。
端から見れば異様とされる風習だが、名前が持つ意味を考えれば当然とも言える処置だ。
呪術において名前というものは重要な意味を持つ。力のある呪術師は相手の本名を手に入れればその人間を思うがままに支配することも、呪い殺すことも出来るという。
個人を特定できる名前は呪術師にとって最強の矛であり、また最大の弱点ともいえる。
だからこそ古の主教達は名前は滅多に表に出さず、呼ばない、という防衛処置をとっていたが、次第に名前そのものをつけないという風習へと変わっていた。
「俺も十歳になるまで名前はなかったよ」
ロジェに名前が与えられたのは彼には呪術や魔法の才能が著しく欠けている事で後継者候補から外されて勘当されたからだ。
それ以前からも既に見放されていたが、もしや才能が開花するかもしれないと様子見で育てられていた。しかしいつまで経っても何ら兆しもない事から見込みなしと判断されて、ミラージュパレスから追放されたのだ。
「じゃあ、ガキの頃は何て呼ばれてたんだ?」
「若様」
「……若様、ねえ。お前は俺と同じ庶民代表だと思っていたのに……」
「でも俺は六歳から下働き同然に扱われていたから、セレブな生活とは無縁だったぞ!」

「なあ、キュカ。他の人達は誰を選ぶかを真剣に悩んでいるというのに、誰を切り捨てるかを考えている俺達って……何だろうな……」
沈痛な面持ちで騙るロジェの肩に、キュカが労わるように手を置いた。
「そこまでうじうじ悩むんだったら、いっそのことあの兄貴を省いたらどうだ?」
「あれでも俺の唯一の家族だよ? それに、これ以上グレたら……どうするんだよ?」
たった一人の身内に見捨てられたと呪詛の声を上げる兄の姿が容易に想像できる。
幾らあんな大問題を起こした兄とはいえ、そこまで追い込むのは本意ではない。それにロジェの叶わぬであろう希望を述べると、今でも全うな道へと改心させたいのだから。

「……兄貴を取るか、恋人を取るか、か。 悩みどころだな」
キュカがしみじみと呟く。
やはり、ロジェには片方だけは選べない。そしてどちらに転んでも……。
「ユハニはどうなんだ?」
「エレナとユハニは二人で一人のようなものだから、どちらかを切り離しては考えられないよ。 ましてや片方だけの投票だなんて、以ての外だ」
そんな事をすれば確実にあの二人を敵に回す。
エレナとユハニの姉弟は幼い頃に親を亡くしてから、遺産目当ての親族達に晒され、その財を狙う輩によって終始命の危険に晒されてきた。
そしてエレナが15歳の成人になるや否や貴族から軍へと転属し、遺産を国家所有のものとして、決して親族に行き渡らぬようにした。
苛酷な環境で共に孤独を分かち合い、支え合ってきた二人の間には余人の立ち入れない深い絆がある。だからこそ、あの二人のどちらかを選んでも、誰も選んでいないということになってしまうのだ。
出来る事ならエレナとユハニの名前を一枚の投票用紙に書き、残りの二枚に兄と隊長の名前を書ければ、この苦しみから解放されて、上手く纏まるのだが……。
そんな事を考えてしまう自らの浅ましさに、軽く失望した。
―……いっそのこと、隊長へ投票しないでおこうか?
ふ、とロジェの頭の中で悪魔が囁く。

フリーミッションX ユリエルへの下克上
勝利条件:隊長の要求を跳ね除けて、投票しない
敗北条件:ナイトソウルズメンバーの全滅
難易度:☆∞ (不可)
頭の中に浮かび出たミッションに、ロジェが乾いた笑いを漏らした。

俯いたまま突如肩を震わせたロジェに泣いているのかと思い、慰めようと声をかけるが、笑っているのに気づいて鳥肌が立った。
「……おい、ロジェ? しっかりしろ!!」
キュカが呼びかけ、肩を揺さぶるが、ロジェが現実に浮上する気配は全くない。
―……おいおい、とうとう壊れたか?
意外と繊細な面のあるロジェのことだ。キュカのように割り切って投票できるような神経ではなかったのだろう。
どうやら彼にとって、あの三人の中から誰かを省いて投票すること自体、無理だったようだ。
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