未完

聖剣伝説HOM 未完 『酒場での語らい』

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注意
私的設定があります。










そこはウェンデルの裏町にある酒場だった。
宗教的に厳格なウェンデルでは飲酒を禁じているが、訪れる外国人向けで秘密裏に酒を提供する店がある。
そのような店は表立って営業できないので、裏通りの地下店でひっそりと営業していた。

……どうして、こうなった?
最初はキュカ一人で飲んでいたが、途中からロジェがやってきて、一緒に飲むことになった。
世間知らずだったロジェに酒場の選び方を教えたのはキュカだから、選ぶ基準が似通っているだろう。そして今のロジェの心境を考えれば家族や仲間たちとの再会を喜ぶ連中から離れて一人で酒を呑みたくなるのも無理はない。
……だからといって、なんでわざわざ人目につかない席にいる俺の隣に来て呑むか?


「ナイトソウルズに俺と同じ庶民はいないのか?」
「おいおい、キュカ。 俺も庶民の一人だぞ」
嘯くロジェにキュカが白い目を向けた。
ロジェは庶民だというが、それは嘘だとキュカは睨んでいる。
何気に舌が肥えきっており、安物は肌に合わないと愚痴を零していた。それに所作振る舞いに品のよさが滲み出ているのだ。
恐らくどこぞの貴族が落胤を富豪に押し付けて育てさせたのがロジェではないか、というのがキュカの考えだ。

「考えてみろ。俺達の中に庶民がいるか?」
キュカに胸倉を掴まれる形で詰め寄られて、気まずさにロジェは目を逸らして思案する。
「えーと……」
ユリエルは大貴族の養子、ジェレミアは大臣の姪、テケリは…族長の孫だったという。ファルコンは上流層のエリートで、ベルガーは代々神官の一族。ロキは黄金の騎士だから、名門の出だろう。
王族のヴァルダとリチャードは言うまでもない。かくいうロジェも主教の弟だ。
錚々たる面子の中で庶民代表といえるのはキュカだけかもしれない。
そこまで考えてはて?と首を傾げる。
気風のいい姉御肌のアルマ。彼女はアマゾネスだが、それ自体は身分関係なく登用される。
何よりキュカの幼馴染みだというから、同じ庶民ではないのか?
「アルマはどうなんだ?」
「アルマ? あいつはああ見えても有力者のお嬢様だ」
「えぇ!?」
衝撃の事実にロジェが声を上げた後、すぐ口を覆った。
素早く周囲を確認した後、キュカに顔を寄せる。
「それ、本当か?」
「じゃなけりゃ、族長の娘と幼馴染みにはなれねえよ」
心なしか小声で尋ねたロジェに合わせて、キュカも囁き声で答えた。
「アルマが……とてもそうは見えなかったよ」
「そりゃそうだろうよ。 アイツはガキの頃から生粋のじゃじゃ馬だぜ」
苦々しく呟いたキュカに、ロジェがはぁと応える。
名家のお嬢様と路地裏の少年。何処からどう見ても接点のない関係だ。
それすらも乗り越えてやってきた女傑アルマに、悪童キュカが負けて子分になる姿が浮かぶ。
流石にこれはないだろうと、振り払った。

「……キュカって、アルマと幼馴染みだよな? どうやって知り合ったんだ?」
聞かれたくなかった問いに、酒を飲んで言葉を濁す。
キュカは親も知らず、路地裏で生まれ育った境遇だ。子供ながらに犯罪紛いのことをやって暮らしていた頃アルマがやってきた。
少女時代のアルマは路地裏に乗り込み悪ガキ共と戦い自分の参加に組み込んでいく、豪胆な子供だった。
その女傑っぷりと戦上手に心酔するものも多く、アルマ軍団は一大勢力となっていた。当時の話は今でもパロで語り継がれる伝説だ。
「意気揚々と路地裏に乗り込んだあいつが絡まれているところを、俺が助けてやったんだ」
「へぇー、そうなんだ」
棒読みで言うロジェに、こいつ信じてねえなと胸中で苦々しく吐き捨てる。
これは事実だ。
その続きを言わせればキュカが助けに出て生じた隙をついたアルマが形勢逆転して、キュカを支配していた悪童どもを懲らしめていたという、格好悪い出会いだ。

「じゃあ、アルマが妹分だったのか?」
「まさか。あいつが俺の妹分に納まるタマか?」
自分で言っておきながら情けない台詞だが、これは本音だ。
少女時代から既に姐さんと呼ばれ頼りにされてきたアルマは生まれながらの姉御だ。
キュカにとって昔からアルマは女ではなく「アルマ」という存在で、性別を超越した存在だった。だから、彼女がジョスターの事を慕っている事を知ったときには、人知れずショックを受けたものだ。
「……うん、ないな」
何やら苦い想像でもしたのか、口直しに酒を飲んだロジェがキュカを見る。
「じゃあ、ローラントの兵士になったのはアルマの紹介で?」
「いや、パロでの噂を聞きつけたガルラ様が軍団を丸ごと受け入れたのが切欠だな」
アルマに紹介される形でミネルバに初めて会った時のことを今でも鮮明に覚えている
ミネルバの目に惹かれたあの時。彼女のために、ローラントに恥じない人間になろうと決心したあの時は決して忘れられない。
当時既にミネルバとジョスターとの婚約が決まっていたから、叶うはずもない初恋だったが。
懐かしくも切ない思い出を遠い目で回顧するキュカに、ロジェが頷いた。

「ああ、だからキュカは今でもアルマに頭が上がらないんだ」

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