未完

聖剣伝説3 未完 『地下基地にての密談』

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注意
私的設定の強い話です。
2→3(HOM)という時系列です。











空中魔導要塞ギガンテスの雄姿に、紅蓮の魔導師の胸が重くなる。
ギガンテス。ルジオマリスに次ぐ新たな空中要塞として作られたそれは、古代神話に登場するマナの要塞ギガントという超兵器にあやかってその名がつけられた。
嘗て世界を滅ぼしかけたというマナの要塞がどれほどのものかは、最早知る術はない。しかし、これからはギガンテスが新たなマナの要塞として世界にアルテナの威光を知らしめる。
いつもなら誇りすら湛えて地下深くに秘匿されたギガンテスの雄姿を管理室から見下ろすのだが、今の紅蓮の魔導師にその余裕はない。
それもこれも、彼の隣に立ち、共にギガンテスを見下ろす真の主の野望に、少々障りのあることを告げなければならぬからだ。
「竜帝様。大変申し上げにくいのですが……ギガンテスには問題があります」
「なんだ?」
ギガンテスの威容に上機嫌の竜帝は、紅蓮の魔導師にとっても大変喜ばしいが、これからそれに水を差すことになってしまう。
このまま黙っているよりも、今話した方がよいと判断して、重い口を開く。
「ギガンテスを起動させるだけの、マナがありません」
これまで完璧に仕事をこなしてきた紅蓮の魔導師にとって竜帝に失敗を報告するのは屈辱であったが、こればかりはどうにもならない。意固地に過ちを認めず、不興を買うよりも、素直に失敗を認めた方がまだ賢明だ。
この数年、理由は不明であるが、マナが著しく減少しており世界各地で異常が発生している。これまで以上にマナが困窮する中、ギガンテスを聖域侵攻に使用するなど不可能だ。
「マナが足りない、か」
「申し訳ありません」
思案する竜帝に、紅蓮の魔導師が居た堪れなくなり深々と頭を下げる。
ギガンテスの機能を減らし、弱体化させれば使用可能だが、それでは意味がない。ギガンテスにはアルテナの威信と沽券が関わっているのだ。
「ふむ……。マナが足りなければ、作ればよいだろう」
「は? ……マナを作るとは、一体?」
竜帝の言葉の意味を飲み込めぬまま、尋ね返す。
マナを作ることが出来るのはマナの女神だけだ。女神のみが生命の根源たるマナを産み出すことが出来る。
「マナを大量に作り出し、再生できる存在は、マナの樹だけではない。
今ではマナの炉とも称されたマナの血族は絶滅しているが、まだ神獣がいる。奴等は自律回復ができる超高純度のマナの結晶体だ。この資源を利用しないでどうする」
「マナストーンをエネルギー源に……。しかし、それでは神獣が蘇ってしまいます」
「なに、心配はいらぬ。マナストーンは神獣とマナの種子が融合して出来た入れ物だ。故に計り知れぬほどのマナエネルギーを宿している。
少々引き出したところで、マナストーンに与える影響など、微々たるものだ」
得意げに語りながらも、胸中でほくそ笑む。
五千年前の文明崩壊はマナストーンのエネルギーを引き出しすぎたことが切欠でおきたようなものだ。だが、それは言わずにおく。紅蓮の魔導師にはマナストーンからより多くのエネルギーを引き出してもらいたいからだ。
「しかし……マナストーンはあまりにも謎が多い。封印を解いた今、迂闊に手を出すのは危険です」
マナストーンという禁忌にこれ以上踏み込むことへ尻込みする紅蓮の魔導師に、竜帝が更なる一手を加える。
「それならば、人間からマナを抽出すればよかろう。
約十万の人間を使えばギガンテスを起動させて、アルテナの威信を世に知らしめるには十分だ」
事も無げに言い放った竜帝の提案に、紅蓮の魔導師は絶句する。
なんという非道を。なんと、おぞましいことを。
主への更なる恐怖に、はらわたがよじれる。
人間からマナを抽出するという概念なら、紅蓮の魔導師は知っていた。
文献から大昔はそれが常態化していたということを知り、そのおぞましい事実に嫌悪を催し、無数の犠牲で成り立っていた文明を唾棄すべきものと思い、祖先達の最も愚かな所業の一つとして蔑んでいた。
「……竜帝様。 今では、マナの抽出技術は失われております。ですからそのような戯れはよしてください」
生命への冒涜ともいえる悪魔の知識も、既に失われた。
五千年前、闇の神獣と溢れ出た魔物によって全人口の七割が死滅した時代に多くの知識と技術が失われた。
マナの抽出技術も当時の大混乱で失われ、文献に残された僅かな知識も心ある人々により破棄された。

「案ずることはない。マナの抽出技術なら、儂が知っておる。 お前は儂の指示に従い、アルテナにマナの抽出技術を伝えればいい。
微々たる魔法で成り立っているアルテナだ。世界からマナが尽きかけている今、マナの抽出技術は喉から手が出るほど欲しい知識だろう。それを渡してやれば、皆のお前への心証はよくなる」
竜帝の言葉にかき立てられるものがない、と言えば嘘になる。
魔導王国アルテナにはマナが必要であることは嫌というほど承知している。また、女王の側近となった今でも彼の事を存在価値のない欠落者と蔑み、ゴミを見る目を向ける連中の鼻を明かすことが出来る。
しかし、だからといってマナ抽出の方法を消し去った先人達の英断と、努力を無駄にしてよいものか……。

「……仮に、そのような非道を行えば反発を抱く者が現れます」
「それはお前のことか?私の可愛い魔導師よ」
「いえ、私はこの身も心も、命すらも竜帝様に捧げております!貴方を裏切るような恩知らずな真似はしません!」
「……ほう。ならば、その忠誠の証として、マナ抽出に使う人間十万をアルテナから徴用しろ」
「なっ……!?」
「僅かなりとも躊躇う奴がいれば、女王のように操れ。反対するものがいればそやつを抽出に使え。
たかが十万人。国民が崇拝し、敬愛する女王が命じれば、志願者は集まる。
お前のすべきことは、女王の口を操り、意のままに言葉を出させることだ」
万が一の事態が起きたとしても失墜するのは女王のみ。女王というスケープゴートに、もう一つ荷物が加わるだけだ。

「………………」
「紅蓮の魔導師よ、どうする?」
「竜帝様。マナの抽出技術ですが……私にだけ教えてください。他の者には知らせず、マナの抽出を行います」
女王への非難を僅かなりとも分散させつつ、マナ抽出技術という最早この世にあってはならぬ知識を広めないための、苦肉の策だ。
「……ほう。それがお前の答えか。まぁ、よかろう。必要量のマナさえ揃えば、儂はどちらでもよい。
ところで、本当によいのか?マナストーンを使えば早く楽に、犠牲なく必要な量のマナを確保できるぞ」
「いえ、ただでさえマナストーンは危険極まりない代物です。その上、封印が解かれた今、無闇に触れぬほうがよろしいでしょう」
主の目を真っ直ぐ見据え、断言する紅蓮の魔導師に、竜帝はこれ以上は無駄だと判じて説得をやめる。
五千年前の大災厄が起きた切欠が何か。竜帝は紅蓮の魔導師が知らないとたかをくくっていたようだが、彼は知っていた。
マナストーンからマナを引き出しすぎれば、神獣の封印が解ける。連鎖的に全ての神獣が一度に蘇る事態になれば、アルテナどころではない。世界の破滅だ。
六千万の命か、十万の命か。どちらを選ぶべきか決まっている。
これも大事の前の小事と割り切ってしまえばいい。

マナストーン封印解除に用いる数人の犠牲なら、まだ国のためと言い訳が立つが、十万という途方もない犠牲は間もなく女王への敵意と怨嗟に変わる。
敬愛する女王をそこまで貶めるのは、紅蓮の魔導師の本意ではない。
だが、それ以上に彼にとって命よりも貴い魔力を与えてくれた竜帝への恩義と忠誠心が勝っていた。


言い訳
紅蓮の魔導師にとって対価を要したとはいえ魔法を使えるようにしてくれた竜帝は、彼がどんな人物であろうと神にも勝る存在だと思います。
紅蓮の魔導師は最初から竜帝の計画を何処まで知っていたのか……。段階的に少しずつ明かしていっていったのかもしれません。

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