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DB VB 小説 『年老いても…』

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注意
ベジブルの晩年…彼らが70代になった頃の話です。

本当は中編の話ですが、この話については幾つかのシーンを載せるという形式で書きます。
(あまりにも好みの別れる話なので、全て載せるのはどうか…と考えてしまって)






注意
オリジナル設定があります。
オリキャラが出ます。






オリジナル設定の説明。
サイヤ人は約300年生き、150年かけて年老いていく。








華々しいパーティ会場の中、最も人々の視線を惹きつける夫婦がいた。
夫である男性は逆立った漆黒の髪に、鋭い目元の黒曜石の瞳を持つ、凛々しく整った顔立ちの若い男。妻である女性は肩まで伸ばした艶やかな青い髪と瞳の、未だに若々しく美しい老女だった。
外見の若さのみならば老女に飼われる若いツバメと誤解されるが、彼ら夫妻の間にある雰囲気は数十年という長い年月を積み重ねてきたお互いへの深い愛情と信頼に満ちており、円熟した熟年夫婦そのものだった。
夫妻が他者に与える違和感の原因を述べるならば、それは夫があまりにも若すぎる事。しかし一言に若いといっても青さはなく、数十年と生きた者のみが持ちえる独特の落ち着きがあった。それがまた男への違和感を増す原因ともなっている。
それもそのはず。外見からは想像できぬが、彼はもう70代だという高齢だ。しかし容貌だけでなく体そのものはまだ若く、老いとは無縁だった。
男は地球人より長命であり、異なる時を生きる地球外生命体のサイヤ人と呼ばれる人種だ。彼らは300年という寿命を誇り、150歳までは老いを知らぬ若い体でいられる。彼にとって容貌が衰えるのは、遥か未来の話だった。
最も彼が宇宙人である事を知っているのは限られた極一部の人間のみであり、世間一般には高度な文明と技術を持ち、地底で暮らしていたが絶滅した民族として数十年も前にC.Cから偽の情報が発表されていた。
その男の隣に建つ妻は、皺一つにも気品があるという言葉通り、美しい女性だ。若さを保つための努力の甲斐もあり、実年齢よりは遥かに若々しい。しかし至る所に年月の経過が現れており、”若さ”そのものの年齢不詳という言葉を体現した男の隣では、どうしても老いが目立っていた。
彼らに送られる視線には様々な意味が含まれていたが、その中でも妻を苦しめていたのは、女達の夫への隠さぬ思慕と自らへの嘲笑だった。

数多くいる招待客の中で、殊更彼らを見つめている一人の女性がいた。
艶やかな栗毛色の髪をアップにして少し崩していたが、それが婀娜っぽい感じを出しており、その雰囲気を裏切らない豊かで形良い胸元に、細くくびれた腰の匂い立つようになめまかしい体を見せ付けるように薄手の紅いドレスを纏う”女”が海を思わせる深く青い瞳で彼らを見つめていた。
彼女は資産家で実業家でもある両親の援助を受けずに、優れた才覚で財をなし事業を起こした有名な人間で、経済界のみならず世界中、彼女の存在を知らぬ者はいないほどの有名人だった。
優れた才覚と美貌から、第二のブルマと呼ばれるやり手の女社長だ。
その女が初めて恋を知った年頃の少女のように頬を赤らめ、熱の篭った視線を送るのはパーティの中央にいる注目の夫妻C.Cのベジータだった。
「…素敵な人ね…」
心此処にあらずという面持ちで呟く。
彼女の崇拝者がその姿を見れば、嫉妬の炎に我が身を焼き焦がされるほど美しかった。

有り余る才能や手腕に反し、あまりにも若く美しい実業家である彼女の周りには常に若い男性の姿が纏わりついていた。しかし彼女はそんな男達には何の感情も抱かずに、ビジネスでの取引商品のような冷たい目でしか見なかった。
纏わりつく男達は、彼女の寵を得て自分の得にしたいという計算から近づいているのはわかっているのだから、こちらはただそれらを有効利用しているだけに過ぎない。
おこぼれを頂こうと浅ましく群がる者、獲物自体を掠め取ろうと目を光らせる者といった、ハイエナのような卑しい男など彼女にとっては只の道具だった。使える者は不要になるまで使い続ける。使えぬ者は相手にすらしない。それが女の男との付き合い方だ。
そんな彼女が恋をしたのは、世界一の大企業C.Cの会長の夫であり、専務のベジータ。華々しい場を嫌っており滅多に表に出ないが、それでもかなり有能な切れ者で、財政界や社交界でその名を知らぬ者はいない。
滅びたサイヤ人という民族は地球の一般的な文明を遥かに凌駕するほど高度な技術と知識を有していたらしく、それらを学会で発表してきたことで、今では学会の重鎮である孫悟飯に次ぐほどの超大物だ。
昔からメディアを通して見てきて、いい男だと思いつつも彼女の好みではなかったので、さほど興味をなかった。しかし一月前に会長であるブルマの誕生日パーティで直に彼を目にした時に、今まで抱いていた印象はガラリと変貌した。
漂う気品や威厳、他を圧倒するほどの存在感は真の王者のみが持ちえるものであり、鍛え抜かれた体躯の中に宿る熱い魂すらも感じられそうな誇り高い目をしていた。
彼を前にした衝撃は凄まじく、C.Cの専務であり、社の内外にも多大な影響力を持つベジータに自分を売り込むための絶好の機会だというのに、何もせずにただ遠くから見つめる事しか出来なかった。
ベジータに一目惚れして、彼を一心に見つめている事で、彼がブルマを深く愛している事がよくわかった。
初めて女が恋を知り、嫉妬を知った日だった。

ベジータの隣に当たり前のようにいるブルマへ嫉妬に満ちた眼差しを向けた。
「いくらブルマ女史が年齢より若く見られているといっても、もうベジータ氏とはとてもではないけれど釣り合わないわ」
この会場にいる女達の言葉を代弁するかのように、本音を漏らす。
ブルマは70代という年齢が信じられないほどに若々しい。しかし未だ青年の若さを保ち続けるベジータと並べば、若いツバメに夢中な老女としか見えなかった。
愛しい男の姿だけをその視界に映して、幸せそうにふっと口元を綻ばせて、頬を緩ませる。
「謎に満ちたサイヤ民族最期の王子様……。本当に、素敵だわ……」
―ブルマ女史にはもう不釣合い。王者に相応しいあの男の隣に立つのは、何もかも手に入れているこの私だけ。
女が冷酷な眼差しをブルマに注ぐ。
―お婆さんは、もう舞台から下がりなさい。
未だにしがみ付く見苦しく滑稽な女を、嘲笑った。

ブルマが背後から注がれる視線に、相手に悟られぬように横目で窺う。
最近よく社交界で囁かれる女社長がうっとりとベジータに艶やかな眼差しを送り、更に彼女に対して見下し、侮蔑するような視線を見て取り、憂鬱な気分になる。
彼女が第二のブルマと囁かれる事も、気鬱の理由だった。
「どうした?」
妻の顔色が悪くなったのを見て取ったベジータが気遣うように声をかけた。
彼を見遣ったブルマに、具合が悪いなら…と続けようとした言葉を彼女が手で制して止めた。
「……大丈夫、なんでもないわ」
先程より幾許か暗い面持ちで答えた。
この場にベジータを一人にすればあっという間に女達が群がる。今の彼女にそれを見て平静でいられる程の自信はなかった。
彼女が周囲に視線を巡らせると、パーティの招待客の殆どが何かしらの感情を宿した目で彼を見ていた。
その中でも女達の視線に篭められた感情に、ブルマの気分は奥底へと落ちて行く。
昔ならば幾ら女達がベジータに懸想しようが、余裕を保っていられた。逆にそれだけの素晴らしい人が自分の夫だと自慢できて誇らしかった。
何より自分に絶対の自信を持ち、ベジータの深い愛情を信頼していたからだ。
けれど、今となっては……。
いつまでも若い夫と、年よりは若く見えても老けていく妻。
周りからどう見られているかなど、嫌でもわかってしまう。
―年をとってから、随分と気が弱くなったものね……。
それが余計に惨めさを掻きたてた。
*****
ブルマが飛び込むように夫婦の寝室に駆け込んだ途端、彼女の中で堰き止められていたものが一気に溢れ出して、涙が零れた。それを皮切りに滝のように流れ出す涙を乱暴に拭い去り、衝動のままドレスを雑に脱ぎ捨て、下着姿になった。
ふと顔を上げて、姿見に映された自分自身の姿に愕然とする。
そこに映し出されているのは、到底若いとはいえない女が、醜く顔を歪め泣いている姿だった。
それを見た途端、先程まで彼女の中を激しく駆け巡り、荒れ狂っていた熱が、急速に冷やされていく。
ブルマが鏡に映し出された体の輪郭をなぞるように、撫でていく。
嘗てあった張りのある肌や、美しい輪郭は失われつつあり、または完全に失われていた。
頬に触れると、昔はなかった皺が刻まれている。
―……誰、この女は?
”私”だと理解していても、認められない。
鏡に映し出される姿が見る見るうちに年老いてゆく。
体の線は更に崩れていき、皺は隠し切れないほど深く刻まれ、自慢の青い髪は総白髪になって、歯が欠けてゆく。
急速に年老いてゆく鏡の中の自分の姿に、意識が遠のいていく。
自分の口から漏れ出たものが、悲鳴だと気付かなかった。

尋常ではないブルマの悲鳴に、ベジータが我も忘れて寝室まで飛びぬき、扉に手をかける。
「ブルマ!!」
勢いよく扉を開き、そこに広がっている光景にかける言葉をなくした。
荒々しく化粧道具は全てばらまかれ、ゴミ箱に捨てられている物もあったが、多くが床に散乱していた。
無残に割られた姿見はブルマが数十年に渡って愛用していた大事なものだ。
自分の手を紅く染め、鏡の前で妻は幼子のように泣き伏せていた。
「……ブルマ……」
小さく紡がれたベジータの声に、嗚咽混じりにすすり泣いていたブルマが顔を上げる。
目は赤く腫れて充血しており、化粧は涙と共に流れ落ちていた。それでも生来の美しさと華やかさは失われていなかった。
「……ベジータ……」
ゆらゆらと幽鬼のように彼の元に歩み寄り、ベジータの顔に手を伸ばす。
常とは明らかに異なる妻の様子に、戸惑っている夫の頬をなぞった。
努力も何も必要なしに、当然のように若くあり続ける夫の両頬を壊れ物でも触るように優しく包み込んだ。
「あんたは本当に変わらないわね……」
年を経るごとに嘗ての有り余るほどあった自信が、少しずつ削られ、損なわれていく。
地球人にしてみれば彼女は未だ若々しいが、ある一定の年齢まで若さを保ち続けるサイヤ人であるベジータとは、どうやっても差が生じ、確実に広がってしまうのだ。
年老いて老女へと変わっていく自分と、民族の特性で百数十年は若い姿を保ち続けるベジータと常に見比べられ、その度に少しずつ確実に心が削られていた。
常に自信に溢れる妻が自分を卑下する物言いをした事に驚きを隠せなかったベジータが、そっと口を開く。
「……サイヤ人は約三百年生きる上に、戦うため若い時期が長いと昔に話しただろ」
数十年前にベジータと身体的年齢が広がってきたブルマに尋ねられて、彼はサイヤ人の身体の構造と寿命について詳しく話した。その際にブルマは納得した、筈だった。
しかし聞くだけの想像と、実際に目の前で起こる現実とでは大きく違ったのだろう。

「……あんたはいつまでも若いままなのに、あたしだけ醜く老いていく……」
昏い目で呟く彼女の脳裏に、先程の社交パーティであからさまにベジータに色目を使っていた若く美しい女社長や、彼に媚びる女達、いい年をした女が、と嘲笑する声や息子以上に年の離れた若すぎるツバメだと嫌味の声が響き、渦となって彼女を飲み込んでいく。
「今じゃ誰がどう見ても、あたしとあんたじゃもう釣り合わないわ!!」
民族の特性上違う時を歩んでいる二人は、同じ年代とは信じがたいほど外見年齢が大きく隔てられていた。
「何も知らない人間は、あたし達を祖母と孫に間違うでしょうね!!」
現にもう何度も間違われ、夫婦だと話した時に信じがたいものを見るような眼差しを何度も向けられた。
修羅の如く顔を歪め、髪を振り乱して、涙を湛えながらも怒鳴り散らす姿は、世に広く知られた”美しきブルマ女史”とは俄かに信じがたい姿だった。
「ブルマ」
ベジータが妻を宥めようと手を差し伸べようとしたが、その手は激しく撥ね退けられた。
頑強な肉体を有するサイヤ人であるベジータには、地球人であるブルマの攻撃に痛みを覚えない。
しかし身体が痛みを訴えずとも、心は痛んだ。
今の彼女の状態が常とは異なると分かっていても、拒絶されたという事実には変わりないから。
ブルマ本人も打ち払った直後に、自分が何をしたのかを理解して顔から血の気が引いていった。
「……ああ、ベジータ……」
荒れ狂う感情の波が静まったときには、最愛の夫に八つ当たりをした事への罪悪感が湧き上がってきた。
「……ごめんなさい……あたし、こんなつもりじゃなかったの……。ごめん…なさい、あたし………あたし………」
彼の胸に縋り付いて、幼子のようにすすり泣くブルマの頭に手を当てた。
「わかっている」
断言する夫の声を聞いても安堵しきれずに、厚い胸板に顔を埋めた。
ベジータがそっとブルマの顎に手を添えて、自分の方に向かせる。彼女は一瞬、顔を逸らそうとしたものの、あまりのベジータの真摯な目を前に無駄な抵抗をやめて受け入れた。
「ブルマ」
愛しい人が自分だけを見つけて、その声が自分の名前を呼ぶ。
それだけでも満たされていくものがあったが、今の彼女はその幸福に浸ることは出来なかった。
「ブルマ。年をとろうが、お前がお前であることは何も変わらん」
毅然と当然の事と言わんばかりに口にする夫を羨望の眼差しで見上げる。
ベジータにとってブルマが年老いて外見が衰えても、さしたる問題ではなかった。それよりも彼女が老いにより心を変質させずに、長く生きることが彼にとって大事だった。
それでも……。
「でも……あたしは、若くいたい! あんたと少しでも釣り合っていたいのに……」
愛する人とつりあう存在でいたい。能力も、姿も…全てにおいて。
年を重ねるにつれて増していき、今では最大の望みである願いは決して叶わず、自分だけが衰えていく様はとても悲しく辛かった。
***
同じ時間を生きることが出来ない。
そんなことは、とっくに覚悟していた。
種族の寿命が根本的に異なるのだから、彼女が先に年老いて逝くことはわかっている。
ブルマを亡くす事が自分を崩壊しかねないほどの喪失感を与える事も。
彼にとってあまりにも近すぎる未来に訪れるであろう、伴侶の死を受け入れる覚悟はまだ出来ていない。
今はただ最も大切なものを失う瞬間まで、彼女の側についていてやるというのが、彼の決意だった。
肩を震わせながら泣きじゃくるブルマを抱きしめながら、ベジータがブルマの肩口に顔を埋める。
妻を看取る瞬間が少しでも遠のくように、妄執に近い願いを篭めて囁いた。
「一秒でもいいから、長く生きろ。 ……俺を置いて逝く事だけは絶対に許さん」

「…………ねぇ、ベジータ……」
「何だ?」
「……あたしが……」
――死んでも、私だけを愛してくれる?
喉から放たれかけた言葉を、全て飲み干した。
彼に残された数百年に近い時を束縛して、不幸な目にだけは遭わせたくなかった。
それに、見苦しい女と思われるのは乙女心が許さない。
だから、せめてこう言ってやるのだ。
「……幸せになってね……。 あんたには”幸せ”になる権利があるってことを、忘れないで」
数百年にも渡る彼の人生に鮮明に残る、誰もが魅了されるような最高の笑顔で。

言い訳
後半を大きく削って、一つの話として纏めました。




2012/6/29 小説へ移行
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