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ゾイド 小説 『Lost Zoids』 プロローグ

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注意
デスザウラーの戦いでゾイドイヴを停止させた場合での、その後の世界の話です。
長編のシリーズものになっています。
ちなみにこのシリーズではレイヴンは古代ゾイド人のクォーターという設定です。
















その瞬間、世界が変わった。

全ゾイドの命の根源であるゾイドイヴの光が弱まり、完全に消滅した。
その一瞬、不気味な静寂が惑星全土を覆い尽くした。
今まで存在していた”何か”が消えたことへの、黙祷の如く。
静寂に包まれた極僅かな時が動き出すと共に、ゾイドイヴに異変が起きた。
それは最初近くにいる人間にしか聞き取れぬような極僅かな軋む音だった。
しかし音は次第に大きくなり、巨大なゾイドイヴに無数の傷が走った。
傷は次第に深く巨大な亀裂となり、端々からゾイドイヴの体を崩壊させてゆく。

ゾイドイヴの光が消えた瞬間、激痛を伴う衝撃と共に今までに感じたことがない程の脱力感が全身を覆い尽くした。
生命力自体が体から抜け出していく感覚に、今まで身近に存在していた死の気配を濃密に感じた。
今、この瞬間にも死にゆこうとしている。
そう直感するも、すぐに気のせいだと思い直して、最愛の女と分身とも言うべき相棒の安否を確かめるために呼びかける。
「リーゼ!!シャドー!!」
「レイヴン!! 僕達はもう駄目だ、だから君だけは早く此処から逃げるんだ!!」
リーゼが悲痛な声を上げるが、それを受け入れるつもりはなかった。
彼らと共に此処から逃げ出す。そうでなければ意味がないのだ。
操縦桿を握り直した瞬間、通信の向こうで何かが倒れこむ音が聞こえた。
すぐさまそちらを見遣ると、リーゼとオーガノイド達が横たわっていた。
急速に体の端から石化して行く彼らの姿を前にして、愕然とする。
漸く取り戻した相棒を、漸く手にした最愛の存在を…全て、失う。
言い知れない恐怖と共に理不尽に奪われる状況に対して、ただ見ているだけの自分自身に激しい怒りを覚えた。
いつかは失うと覚悟していたが、それを成す術もなく見るような終わり方であってはならない。
一刻も早く彼らの元に向かうために操縦桿を握り締めるが、ゾイドはその意思に応えなかった。
「クソッ!」
罵りの声を上げて通信の向こう側を見ると、既に彼らの体の大部分は石化していた。
声にならぬ声を上げて、消え行く命をこの世に繋ぎとめるように懸命に名前を叫ぶ中、彼女達は完全に石化した。
大切な存在が、完全に失われた。しかもそれをただ見ているだけだった。
その事実は到底受け入れがたく、何も考えられずに衝動的にコクピットを蹴り飛ばそうとしたその時だった。
異変に、気がついた。
体の自由が全く利かず、手足は既に感覚がなかった。
その事実に動揺するかと思えば、彼の心は既に限界を超えたのだろう。自分でも驚くほどに平静だった。
何が起こっているかを確認すべく、感覚がなくなりゆく肘を辛うじて曲げると、動かせない手の代わりに口で手袋の端を噛む。
その際に指先を強く噛んだにも関わらず痛みは一切なかった。それどころか人間の体とは思えぬほどに硬かった。
言い知れぬ不安を抱きながら手袋を外し、隠されていた手を見た瞬間…驚愕と共に得心した。
彼の手はリーゼ達と同様に石化していた。
体の端、関節から徐々に石化が始まって全身を侵食する。
リーゼ達を襲った災禍と同じだが、決定的な違いは進行速度。
瞬く間に石化した彼女達とは異なり、レイヴンは緩やかだが確実に石化が進行していた。
それを見た瞬間、今まで不可解に思っていた疑問の答えを理解した。
両親が殺された時、帝国領にある自宅からどのようにして共和国領に入り、ダンの部隊に救われたのか。
プロイツェンと初めて会ったとき、どのように奴の先回りが出来たか。
何故、シャドーの言葉を”言語”として聞き取られたのか。
レドラーを墜落させた際、何故ほぼ無傷だったのか。
デススティンガーの荷電粒子砲から、どのようにして逃れられたのか。
――何故、純粋な人間である自分が、古代ゾイド人と同じ空間を移動する力を備えているのか。
その力を持つ理由を疑問にしながらも、わざと考えないようにしていた。
しかし死を目前とした今、その答えを突きつけられた。
「レイヴン……!!お前……!!」
遠く聞こえた宿敵の声に、我に返った。
レイヴンがそちらに目を向けて、バンを見ると彼は狼狽し、憔悴している様子だった。

「何故だ!? お前は古代ゾイド人じゃないだろう!!」
その脳裏に過ぎるのはゾイドイヴに引導を渡し、共に死んでしまった大切な存在の事。
全てを理解した上でゾイドイヴを停止させたフィーネが最期に見たものはなんだったのか。
受け入れがたいその最期をただ呆然と眺めているだけだった自分か、それとも別の何か。
確かなのは彼女は微笑んだまま意思と化して、永遠に時を止めたという事実。
「なのに、何で……お前まで……!?」
レイヴンは古代ゾイド人ではない。
それはGFではごく当然の認識だった。
しかし今通信の向こう側で起きている光景は、それを根底から揺るがした。
「いつの代かは分からないが、何処かでその血が混じったんだろう」
常ではありえぬ、淡々とした感情の宿らぬ声。
掠れており、舌が回りにくいのだろう。聞き取りづらい声だった。
しかしバンが衝撃を受けたのはその言葉の意味。
―血が、交わる……。
古代ゾイド人と人間の血は交わりあえないというのが定説だった。
元々現存するカプセルは少なく、長い歴史の中で彼らと血が交わったと証明するものが存在しなかったからだ。
特にこの数百年は軍部で研究という名目での、非人道的な扱いがあったにも拘らず。
それらの事実から混血など存在しないというのが暗黙の常識だった。
―血が混じるのなら……。 まさか、それじゃあ……!!
バンの脳裏に鮮明に蘇ったものは、デススティンガーと戦う前夜に語らったフィーネの姿。
ある考えに至った瞬間、彼の呼吸と心臓は動きを止めた。

「さっさと行け、バン!! お前のゾイドが動けるうちに、早く!!」
石化してゆく体に残された最後の力を振り絞って、声を張り上げる。
しかしそれはとても弱々しいものだった。
他のゾイドが完全に石化した今でも、ブレードライガーは端々が僅かに石化しているだけだった。
恐らくゾイドイヴの恩寵深きジークが進化させたからだろう。
それ故にまだ動き、生きていられた。
動きの鈍くなったライガーが動き出す直前、バンからの通信が入った。
「……レイヴン。 お前は……俺の、最高の…ライバルだ」
嗚咽の入り混じった声を最後に通信が途絶えた。
動き出したブレードライガーは本来とは比べ物にならぬ程鈍くなっており、先端から石化が徐々に進行していった。
去ってゆく期待の姿を確認し終えてから、天を仰ぐ。
―…行ったか……。
息を吸い込もうとするが、肺を動かすことは叶わずに呼吸が出来なかった。
石化はレイヴンの体を侵食し、とうとう残されたのは顔だけになった。
もう、時間がない。
意識が朦朧とする中、リーゼとシャドーの姿を最後に思い描く。
最後に残された息を吐き出す形で彼女達の名を言うが、それは殆ど声の形を取っていなかった。
―お前達と同じ時に、同じように逝けてよかった……
もし生き延びられたとしても、そんな生など受け入れられなかった。
だからこそ、このような形で終わるのが何よりも救いだった。
最も大切な二人を思いながら目を閉ざすと、彼の体は完全に石化した…。

石化した大型ゾイドの上から、崩壊していくイヴポリスを望遠鏡で見つめる一人の人間がいた。
「とうとう、滅びたか……。 この分では残されたカプセルも全滅だろう」
落胆した声音で吐き捨てる。
深々と被ったフードに覆われた顔立ちは分からないが、中肉中背の体格と窺える顔立ちからその人物が年若いことがわかった。
「しかし……。このまま此処で本当に死なせるには、あまりにも惜しすぎるな。
今度は私の手足になってもらわねばな」
奇妙に口角を歪めてどこか歌うように言葉を紡ぐと、その人物の姿蜃気楼のように霞んで、完全に消え去った。

2012/3/20 小説へ移行
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