未完

聖剣伝説3 未完 『花畑』

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『約束』前提の話です。
ケヴィシャル…シャル→ケヴィン色が強いです。















日の光が燦燦と降り注ぎ、四季折々の花が咲き誇る美しい花畑。まるで天国のように穏やかで和やかな風景の中、二人の少年と少女が座っていた。
一人は見事なまでに鍛え抜かれた体躯と硬質の金髪に金色の瞳を持つ精悍な顔立ちの少年で、もう一人は天使のような淡い金髪の巻き毛に、深い蒼の瞳を持つ可愛らしい童女。
少年は耳が長く尖っており縦長の瞳孔を持つ事から、純粋な人間でなく夜の闇に棲む獣人であることが分かる。しかし獣人族は四本指なのに対して、器用に花輪を作っている少年の指は人間と同じ五本指だった。
その少年の隣で眉間に皺を寄せ、失敗した花束を苛々とした面持ちで投げ捨てた少女は、外見だけを見れば十歳にも満たない。しかし彼女が見かけどおりの年齢でないことは、強風が巻き上げた際に髪に隠された耳が貝の形をしている事からも分かる。
少女の中には人間とは比較にならぬ程の、長い時を生きるエルフの血が流れている。それゆえに成長が人間よりもゆっくりと進んでいた。
隣り合って座っている少年と少女は実は同い年なのだが、外見だけではそんな事は分からない。

シャルロットが新しい花輪を作ろうとするが、何度やっても途中でほつれてしまい、上手くできなかった。彼女が膝の上においていた積んだ花束を横に置いて、自分の小さな両手を見つめる。
エルフの特長により成長が遅く、もうじき16になろうという年齢なのに外見はまだ5、6歳にも満たない。
人の中で暮らしているのにあまりにも遅すぎる成長速度。
理不尽さにいつも苦しめられ、いっその事エルフの血が流れていなければというジレンマに襲われることもある。しかしそう考える事が両親や自分。そして周りの環境をも卑下して嫌う事なのだ気づいてからは、血を恨めしく思うことはなくなった。


深呼吸し、気を取り直して花輪作りを再開する。
出来ないことを、成長が遅いからと血のせいにすることだけは、彼女のプライドが許さない。
小さな手で作るのに苦労するが、それでも少しずつ編み上げていく。このままできるかと思われたが、やはり先程と同じところでほつれてしまった。
シャルロットがほつれた花輪を睨むように見つめる。
―どこが間違っているんですか?


一行に完成する素振りのない花輪作りにシャルロットが頭を抱えて唸る。
ふと、頭の上に何かがふわりと載せられる。
目を丸くして、何事かと思い隣を見ると、ケヴィンが太陽によく似合う明るい笑顔を浮かべていた。
「シャル、よく似合う」
「あ…ありがとうでち…」
見る者の心を暖かくさせるような笑顔と、思わぬ優しさに胸が高鳴り頬が紅潮する。
―な、何を考えてるんですか、あたしは!? ケヴィンさんは中身はお子様のままですよ!?それにあたしにはヒースという人が…!!
よぎった思いを勢いよく振り払った後に、内心の動揺を隠すように、ケヴィンから顔を逸らす。
普段とは異なるシャルロットの様子に、ケヴィンが怪訝そうな面持ちになり顔を覗き込もうとするが、シャルロットは背を向けて目を合わせようとはしなかった。
「……シャル。オイラ、怒らせることした?」
哀しげな声音にシャルロットの胸に罪悪感という痛みが走る。
ケヴィンに気づかれないようにゆっくりと振り向くと、彼の顔には悲痛な色が宿っていた。
その顔を見て、普段意識する事もないケヴィンの孤独な幼少期が浮かんだ。
人間を憎む獣人達の社会の中で、混血ゆえに王の息子でありながら蔑まれ嫌われてきたという。その孤独は同じ混血でありながら祖父を初めとした人々に愛されて育ったシャルロットには一生かかっても理解できないだろう。
けれど、いつもそんな事を感じさせないのは、ケヴィンがそんな過去を背負いながらも明るく笑うようになったからだ。


話を逸らすべく、必死に話題を探っていくと頭に載せられた花輪に意識が向く。それはよく出来ており、とても初めて創ったものとは思えない出来上がりだった。
先程過ぎった疑問と共に言葉を紡ぐ。
「ケヴィンしゃん。 ……一体誰に花輪の作り方を教わったんでちか?」
彼の言動から察せられるビーストキングダムでの生活には、花輪の作り方を教えてくれるような人間はいなかったはずだ。
ケヴィンが顔を綻ばせて、懐かしそうな色を浮かべる。
「エリザに教わったんだ」
―エリザ、誰それ?
何処かはにかむような笑みで紡がれた言葉を聞いた瞬間、シャルロットの心に鋭い痛みが走る。
鋭く鈍い痛みは心の中を抉り、彼女の周りを闇に染めていく。
15年に渡る人生で、こんな感覚を覚えたのは初めてだ。


――今まで彼がこんなに嬉しそうに女性の名前を口にすることなど、なかった――
暗く淀んだ思いを抱き、わけがわからずに涙腺が緩む。
「………エリザって、誰でち?
少女の口から放たれた言葉は無機質で、普段の彼女を知る者が聞けば別人の声と錯覚する。それ程今の声に感情は込められていなかった。
「エリザはオイラの姉ちゃんのような人。カールと会うまでは、一緒に遊んだり、色んな事を教えてもらった」
「…………ケヴィンしゃんは、そのエリザしゃんのことが…好き、なんでちか?」
心の痛みに堪えながら、恐る恐る上目遣いで尋ねる。
「うん」
近しいと思っていた存在にも、自分にとってのヒースのような存在がいた。それだけなのに……。
――なぜこんなに悲しくなるのかが、わからない――


ケヴィンが太陽のように明るく朗らかな笑顔を浮かべる。
「カールも、デュランやアンジェラにホークやリースも、みんな大好き」
予想だにしなかった答えにシャルロットが唖然としてケヴィンを見上げる。
「あ…あたちはどうなんでちか?」
後先考えず、ケヴィンに身を乗り出して問いかける。
―だから、何を考えてるんですか!?あたしは!!ケヴィンさんは精神的にお子様なんですよ!!
理性は今でも引き返せと喚くが、それよりもこのまま彼の気持ちを聴きたいという思いが強かった。
ケヴィンが困惑した面持ちを浮かべ、彼女を見つめる。
「シャルは、大好きだけど…何か他のみんなとは違う好きだから、よくわからない……」
「もち、エリザしゃんと付き合うってなったら…どうちますか?」
ケヴィンがきょとんとした表情でシャルロットを見る。
「エリザは姉ちゃん見たいなものだから…一緒にいたいけど、そういう人じゃない。
エリザは好きだけど……コイとは違う気がする…」
彼の脳裏に、デュランとアンジェラ。ホークアイとリースの仲睦まじい姿が浮かぶ。
自分とエリザとをその姿に重ねてみるが、どうも違和感を感じてしまう。
何が違うのだろうか?今のようにエリザとこうして遊んでいる時は楽しかったのに、
幾ら考えるが、当てはまりそうな答えは見つからなかった。
こういうことは人生経験が豊富そうなホークアイならばすぐにわかるだろう。
「……ごめん。オイラ、何て言えばいいのかよく分からない」


「でも…シャルは他のみんなとは違う好き…だと思う」
「なんでちか、それは?ハッキリ言ってくれないとわからないでち!」
「ごめん!…オイラにもよくわからない。
でも、何か違う。」
―その気持ちを、口に出して言って欲しいんです!!
喉まで出かけた言葉は放たれる事なく、飲み込まれる。


先程までの陰鬱とした気持ちが不思議なほど消し飛び、心の中は今の快晴と同じく晴れ晴れとしていた。
突然笑い出したシャルロットにケヴィンが目を丸くする。


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